医療従事者、産業医スタッフ向け



今月の現場から(保健師コラムリレー)

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~ 働き生きることの想いを紡ぐ ~

沖縄産業保健総合支援センター 産業保健専門職 千葉 千尋

青い海と空。南国の色鮮やかな花と緑に囲まれた沖縄は、1年を通じて暖かい気候と豊かな自然に恵まれています。全国的には人口減少社会となっているなか、人口増加率が全国で最も高くなっている沖縄を、私は生命力に溢れたパワフルな県だと思っています。 その一方で、健康診断の有所見率8年連続全国ワースト1、働き盛り世代の死亡率が男性5位・女性4位と、かつての世界長寿の島にその面影は薄くなってきています。
保健師の仕事を通して、美しい光を放つ島の様々な姿や課題も改めて見えてきます。

私は2018年6月から沖縄産業保健総合支援センター(以下「当センター」という。)で働き始め、日々たくさんの方々と出会うようになりました。 「治療と仕事の両立支援」では、労働者をはじめ事業場の人事労務担当者、産業医、医療機関の主治医、看護師、医療ソーシャルワーカー、関係機関の担当者等と関わり、様々な状況や立場の人たちから「治療と仕事」をテーマに、多くの話しを聴く機会を持ちました。
労働者や事業場の担当者から聞く生の声は、私自身の先入観や誤解に気づかせてもらう良い機会でもありました。

昨年度、当センターでは30人~50人未満の事業場に両立支援の認知や意識、取り組み状況などを調査するためのアンケートを実施しました。アンケートから両立支援の情報提供を希望する事業場を訪問したことで様々な気づきがありました。
 ある事業場の担当者は「支援をしていると思っていない。社員の働きたいとういう意志を尊重する過程で、病気の労働者が働きやすい仕組みが出来上がってきた」と話し、両立支援に取り組む職場の風土が、自然と出来上がっている事業場もあるということを改めて知る機会となりました。
 また、治療と仕事の両立が困難な理由に「上司や同僚の理解が得られない」という声が多い中、ある事業主は「病気によって体調を崩すことはあるが、病気によって仕事のスキルが落ちるわけではない。」と話しています。両立支援に理解を示す事業主の生の声が聴けたことは事業場訪問の収穫の一つであり、トップの理解と決断が支援を進めるうえでの第一歩となることを感じます。
 このように50人未満の規模の小さい事業場の中でも、労働者の意志を尊重しお互いに良くコミュニケーションを図ることで両立支援を実施している事業場があることを知りました。


 労働者からも両立支援を通して、多くの気づきを与えてもらっていると感じます。相談の中では、病気になっても働いていけるかということ、事業場の理解が無く希望する就労継続が困難であるということ、事業場の担当者とうまく話し合いが出来ないということ、同僚に対して気を使ってしまい孤立していることなど、仕事に対しての不安を話す声を多く聴きました。
また、多くの労働者から、病気になったことで変化したことを教えてもらいました。
「無理をしすぎないようになった」「人との出会いの大切さを知った」
「自分の出来ること出来ないことを知ることが大切だと思った」
「言わなくても分かってもらえるではなくて、伝えることが大切だと知った」
教えてもらった言葉からは、病気の有無は関係なく仕事を通して他者と関わり生きていくということを考える機会になりました。
 「がん患者=暗い人生では世の中がさらに暗くなる。私はがん経験者でも、もっと積極的な生き方を追求したいです。」ある労働者の言葉は今も強く印象に残っています。
様々な個別の状況はありますが、労働者にとって治療をしながら働くということは働き方や更には生き方を見つめ直す大きな転機となっていることが多く、いろいろな労働者の話しを聴く中で病気になることは必ずしもネガティブなだけではないということを強く感じ受けました。

 そして両立支援に取り組む事業場の声と、治療しながら働く労働者の声をただ聞いているのは勿体ないと思うようになりました。その声をすくい上げ、そこに光を当てて多くの人にも知ってもらいたいと思い事例集を少しずつですが作り始めています。
(当センターのHP https://www.okinawas.johas.go.jp/ryoritsu/)
タイトルに「つむかぎ」という言葉を付けました。「つむかぎ」とは、沖縄の宮古島の方言で「優しい」という意味があります。
誰もが生き生きと働いていける優しい社会となっていきますように、そして沖縄から両立支援の想いを紡いでいこうという願いをタイトルに込めました。
これからも多くの人たちとの出会いの中で、働き生きることの想いを紡ぐかけ橋となれるように、私も仕事をしていきたいです。