医療従事者、産業医スタッフ向け



今月の現場から(保健師コラムリレー)

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~「治療と仕事の両立支援」に取組む~

鹿児島産業保健総合支援センター 産業保健専門職 保健師  末吉 朋

平成30年NHK大河ドラマ「西郷どん」の舞台、鹿児島県の推計人口は1,625,434人(平成29年10月1日現在)で、年齢3区分別人口割合は、年少人口(0~14歳)が13.5%、生産年齢人口(15~64歳)が55.7%、老年人口(65歳以上)が30.8%です。高齢化率は、全国の27.7%を上回っています。人口割合の推移(平成17年~平成29年)を見ても、年少人口と生産年齢人口は減少し、老年人口は増加しています。また、鹿児島県は労働者数50人未満の事業場が97.1%という割合です。今後、高齢者の労働人口は増加するといわれる中、働く意欲と能力のある労働者が治療と仕事を両立していくことは労働者と事業場にとって欠かせない取組となることが考えられます。
 当センターでは、支援の基盤として、患者(労働者)・家族、事業場、医療機関等それぞれにおいて啓発活動やセミナー、研修を実施し、治療と仕事の両立支援の理解と取組みを推進しています。
現在、鹿児島県では「治療と仕事の両立支援相談窓口」を3ヵ所設けています。相談窓口においては医療機関と連携しながら支援を必要とする患者(労働者)が一人で悩み、不安を抱え、誰に相談することもなく早期に退職を選択することがないように相談窓口の案内や相談に繋げるように取組んでいます。出張相談窓口設置後の医療機関に対しては、両立支援の事業内容の理解と連携に繋げていくために、看護部や医療連携室等の看護師、MSWに対して院内会議の前に、また患者とその家族に対して患者サロンで説明会を実施しました。
 看護師やMSWへの説明会では、両立支援の概要の他にがん診断後の患者の心理過程や闘病と心理ストレス、就労状況(統計)などについて話し、精神的な動揺や不安、仕事の継続が難しいのではと考え早まって退職を選択する場合があること、そのため早い段階で両立支援相談窓口があることを患者に知ってほしいこと、働く意欲と意思があるのに相談する前に退職を希望することを防ぎたいことを伝えました。そして、両立支援を実践するにあたり早期からの支援開始やチーム(院内、多職種他機関)での支援の必要性、「患者」ではなく「社会で生活する者」としての視点をもつ重要性、その人らしい生活を送るために自己決定を支援することが大切であることを伝えました。また、看護師には日々の全人的看護を遂行する中で仕事に関する不安・心配・疑問等のある支援を必要としている患者を必要な関係機関(治療と仕事の両立支援相談窓口)に繋げることの大切さを話しました。診断直後や入院直後は病気や手術のことに気持ちが向き、仕事のことは考えられない患者も多いため気持ちが少し落ち着いたときに相談窓口に足を運ぶことができるように相談窓口案内とチラシを入院時やMSWとの相談の中で渡すようにしてみることや、問診票に両立支援に関する項目を入れることを提案し、今それが少しずつ実践に繋がっています。そして、急性期病院であることから相談の必要性を感じていなかったスタッフからも「早期からの支援の必要性を理解できた」「患者にとって仕事を続ける大切さを改めて感じた」という声が聞かれました。
 患者サロンでは、当センターの支援内容を話し、今の職場で働き続けたいと望んでいる患者(労働者)が治療と仕事を両立していくことに不安や疑問を抱いたら一人で悩まず相談窓口があることや相談してみることを伝えました。また、治療と仕事の両立支援は、私傷病であることから、労働者本人から支援を求める申出がなされたことを端緒に取り組むことや大切な健康情報のため、本人が同意した上で必要最小限の健康情報を職場に伝えること、復職や両立支援が自分の思い通りに進まない場合もあること、その場合は職場と十分に話し合い説明を受けることが大切であることなどを話しました。
 医療機関のスタッフも患者も「治療と仕事の両立支援」の内容について知らない人がまだまだ多い現状です。知らないと支援に繋げることも、支援を申出ることもありません。これからも事業場の理解と風土づくりも含め、他職種他機関と連携しながら両立支援の取組みを支援していきたいと思います。