医療従事者、産業医スタッフ向け



今月の現場から(保健師コラムリレー)

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~がん治療と就労の支援を推進していくために~

富士通(株)健康推進本部 健康支援室 保健師 岸香織

がんは、1981年から日本人の死因第一位となり2018年には101万人が新たにがんと診断されたと推定されています。うち、就労世代ががんにかかる人も少なくなく約3割が就労世代に発症しています。
 一方で、がんは慢性疾患といわれるほど治癒もしくは長期にわたる安定状態が期待できる病気になってきており、通院で治療するケース(外来化学療法)が増えています。つまりがんによる病気休業からの仕事への復帰や治療をしながら働き続けることが可能な時代になっているといえます。
 ちなみに弊社にも、働きながら大腸がんステージⅣの治療を続けて、7年が経過する従業員がいます。
[事例]
●年●月大腸がん診断、手術を受けた後、約半年12クールの化学療法
●+3年●月腹膜播種再発、手術を受けた後、約半年12クールの化学療法
●+4年●月腸骨リンパ節再発、手術
●+5年●月鼠径リンパ節転移、化学療法開始。現在も治療中
 手術の時にはそれぞれ2か月間・1か月間と休職はしましたが、他は仕事を続けながらの治療でした。現在、画像上と血液データ上、ともに再発の兆候はなく、一昔前では想像できなかった医療の進歩はさることながら、本人の気力・リテラシーの高さ、業務の工夫、きちんと病状の報告があったことなどで保健師としてもとても支援しやすかったです。とは言っても現実は報告できるような立派なことは何一つ出来ていません。貴重な人材の離職は避けたいという思いで、ただただ話を聞いて「がんばれ!」と応援するばかりでした。
 ご本人の工夫としては、抗がん剤の副作用のピークを土日に持ってくるなど、治療日の設定で有給休暇取得を節約したこと、そして、仕事仲間には病状を正確に説明し、仕事の情報を共有し、突発の対応をお願いできるよう心掛け、また、インターネットの情報は信用せず患者会などで情報を収集していたそうです。
 一般的に従業員は、会社の制度を詳しく知りません。弊社は、がんに特化した制度はありませんが、今ある復職・両立支援制度を最大限に使うことを勧め、職場の柔軟な配慮で乗り越えてきました。産業保健スタッフは本人の希望だけでなく会社や職場の理解を得ることも考えなくてはいけません。より良い支援をするためには職場の上司・同僚、職場づくり支援スタッフ*1、人事、産業医との連携が大切だと感じます。それらのコーディネーターの役割は会社の中ではやはり保健師が適任であると思います。
 ご本人からは、保健師は雑談の相手になってくれて、しかもがんについてわかってくれている人と気軽に話せる場所があることはとてもありがたいと言ってもらえました。がんと診断を受けた社員は、まずは保健師に相談してほしいと思います。
 ここ数年で世の中の働き方もずいぶん変わってきました。有給休暇が半日や時間単位で取得できたり、FLEX勤務、テレワークなどちょっとした柔軟性のある働き方を多くの企業が導入すれば、働きながら治療が続けられるなども含めた、様々な事情をもつ社員も働きやすくなると感じています。
 
*1 職場づくり支援スタッフ:役職を離任し担当部門に広い人脈を持つベテラン管理職で、社員の相談やアドバイスを行っている