医療従事者、産業医スタッフ向け



今月の現場から(保健師コラムリレー)

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~治療と仕事の両立支援には「時間」や「準備」が必要~

山形産業保健総合支援センター 板垣 有香

山形産業保健総合支援センターに入職して2年が経ちました。この期間、治療と仕事の両立支援については、制度の周知啓発活動や、事業場への個別訪問支援、労働者(患者)の方を通しての個別調整支援など、様々な形で関わらせていただきました。過去に自分が所属していた会社の従業員の方を支援することを経験しましたが、外部機関の立場では異なる部分が多くあり、試行錯誤しながら、また他県の産業保健専門職等に相談しながら対応を重ねてきました。
 両立支援の対応で留意している点として、病気は大きな転機の一つであり、生活、働き方(仕事)、家族との関わりや自分の生き方を見直し、価値観が変わるときと捉えています。そのため、支援を行う本人との面談では、「これからどうしたいか?」「どう働きたいか?」など本人の希望や意思をまず確認するようにしています。しかし、たいていの場合は、「働きたい気持ちはあるけれど、前のようには働けないかもしれない」、「どうしたらよいかわからない」などと不安を訴える言葉が聞かれ、自分の身体や体力等について自信がなくなっており、どうしたらいいか決められない様子がみられます。
 会社側にとっては、もしかしたらその様子が「働きたくないのだろうか?」という感じに見えるかもしれません。そういった双方の思いのすれ違いが起きてしまうと、両立支援はうまくいかなくなってしまうと感じています。
 そのため、会社の担当者に対しては、本人の状況や不安を理解していただけるよう主治医の意見書や本人の言葉に加えて補足を行い、スムーズな職場復帰のために、短時間勤務等の段階的な職場復帰を提案し、復帰プランを検討していただきます。
本人に対しては、職場に復帰するという目標に向けて、会社にお任せするのではなく、自分の身体の準備をしていくことが必要であることをお伝えします。働いていると普通になっていますが、毎日出勤時間に間に合うように起きて、準備して出勤する、という生活リズムを保つことは実は結構大変であり、休業が長い期間続くとそのリズムを取り戻すのには時間がかかります。生活リズムを整え、活動や運動によって体力の回復を図る必要性を説明し、実際に本人が行動し、少しずつ休職前の状態に近づけていくことで、職場復帰へのイメージができ、前向きな気持ちにつながると考え、支援を行っています。できれば、こういった本人の準備が必要であることを、事業場の担当者や両立支援に関わる方々に知っていただき、治療が落ち着いた頃に本人にお伝えいただけたら、もっと職場復帰がスムーズになるのでは、と支援の経験から感じているところです。
 「両立支援」とひとことで言っても、主治医との情報共有、本人の準備、会社での準備など、行うことが様々あり、思っている以上に時間がかかります。個別の事例においては、(本人の会社への申し出が必要ですが)病気の診断時から両立支援はスタートすると思っていただき、準備をしていただけたらと思います。