今月の現場から(保健師コラムリレー)

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治療と仕事の両立支援についての産業保健職の役割について

キヤノン株式会社 下丸子健康支援室 伊藤雅代

弊社の産業保健活動は、医師である社長の指示のもと1950年(昭和25年)医務室が設立されたところから始まっています。開設当初働いていた先輩保健師の記録から、社員一人一人の健康を大切にしながら、一次から三次予防までカバーした施策を展開していた様子がうかがえます。現在会社規模、対象者の平均年齢や社会情勢の変化の中で、健康第一主義という行動指針のもと、メンタルヘルス施策とがん対策を含んだ生活習慣病施策を中心に産業保健活動を展開しています。
 私自身は、事業所産業保健活動の中で、健康施策の事業所展開とともに、社員からの個別相談を行ってきました。
 今回は思わぬ病気に見舞われ、休職から復職に至った社員との関わりについてご紹介したいと思います。
 管理職より、悪性腫瘍が発見されどうしたらいいかと部下が悩んでいると相談を受けました。ご本人は動転し、夜も眠れない様子で、お会いした時には、どうして、どうしたらいいのだろうという言葉を繰り返す状況でした。時間をかけお話を伺いながら、主治医から説明された治療計画を確認しました。幸い早期で、通常の治療範囲の様子でしたが、ご本人にとっては、病気への不安、初めての長期休業への不安があり動揺されていました。ご本人が落ち着いたところで、会社の休職制度について人事担当者とともに資料を使って丁寧に説明し、必要なら同様のことをご家族や主治医への説明もできること、かつ、不明なこと、不安なことがあればいつでも対応すること、休職中の連絡方法をお伝えしました。また、同僚に病名を知られることの不安に対しては、上司を交えご本人と相談し、病名は伏せて体調不良でお休みする事を周囲には伝える方向で合意しました。その方は、手術後しばらくの期間を経て復職され、復職時には再発への不安は示されたものの、ご家族の支えもあり仕事に前向きに取り組める状況になり、その後順調に働いています。
 特殊な病気となられた方は、復職後の働き方について、本人、ご家族から不安が示されました。職場の上司は、どのように動けば、ご本人への配慮と、ご本人の能力を生かすことができるのかと悩まれていました。ご本人は、仕事がしたい気持ちと再発の不安から、時に涙ぐむこともありました。ご本人の想いに寄り添い、時間をかけて本人、上司、産業医、人事と相談することにより、ご本人の能力に見合いかつ、これまでより身体的な負荷が軽減できるよう業務の見直しをしました。病状の変化により心身の状態が揺れ動くことが想定されますので、ご本人が少しでも安心して働けるように産業医・ご本人・上司・人事との連携体制をつくり経過を見ています。
 健康は働く多くの人にとっては、当たり前にあるもので、普段は意識していません。その中に病気という要素が入って来た時にそれが、働くこと・生活をすることに影響を及ぼすほどに、ご本人の価値観や立ち位置を見直す必要が出る可能性があります。そのような時に、一助となるべくこれからも役割が果たせればと願っております。

※本コラムで紹介している事例は、筆者の自験例を元に作成したものです。

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