今月の現場から(保健師コラムリレー)

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事業場へのアンケート調査から考える両立支援の課題とこれからについて

長崎産業保健総合支援センター 産業保健専門職 山下 美和子

病気の治療を受けている人にとっては、体調の変化や薬による副作用、定期的な通院等といった様々な負担があります。
 病気や内部障害は見た目にはわからないことが多く、当事者にとっては職場でどこまで理解してもらえるのか、どこに相談すれば良いのか悩むことがあると思います。高齢化が進むことにより、何らかの疾病を抱えながら働きつづける人が増加する中、治療と仕事の両立支援をさらに推進していく必要があります。
かつて私が企業の産業看護職として勤務していた時は、顔の見える関係性の中で、産業医との連絡を密に取りながら、病気を持つ社員からの相談対応、職場や人事部門との連絡調整を行ってきました。
 一方、産業医や産業看護職が常駐していない中小事業場の場合はどうなのでしょうか?
 当センターで令和4年と令和5年に実施した県内の健康経営優良法人(中小規模法人)事業場へのアンケートによると、
 「両立支援にすでに取り組んでいる」と回答した事業場は53%で、最も多い取り組みは「相談窓口を作り、その周知を図っている」で56%。
 「長期療養が必要な病気の治療をしながら働いている従業員がいる(過去にいた)」と回答した事業場は41%で、そのうち「困っていることがある」と回答した事業場は58%。困っている内容について最も多いものが「職場復帰に関すること」で31%、次いで「主治医との連携が取りづらい」で19%でした。
 また、希望があった事業場への個別訪問を実施したところ、事業場の担当者から「詳しい病状がわからず、いつ職場復帰できるのか」、「復帰後職場でどう配慮すればいいのか」等の相談を受けました。
 長崎県内には現在3ヵ所の両立支援出張相談窓口が開設されていますが、今回のアンケート調査(令和5年分のみ)によると出張相談窓口の知名度は3%ときわめて低かったものの、「機会があれば利用したい」は43%でした。
このアンケートの結果を踏まえて、長崎産業保健総合支援センターでは、以下の3つに重点的に取組みたいと考えています。
 ① 事業場内における相談窓口の設置とその周知により、両立支援が必要となった人が安心して相談できる体制づくりへの支援
 ② 出張相談窓口の周知と利用促進
 ③ 職場復帰や医療機関との連携に関する事業場担当者へのアドバイスや支援
 特に③については、医療職である産業保健専門職として力を入れていきたいところです。
 今後、事業場のニーズをさらに細かく把握し、関係者間での情報の共有、主治医やMSW等の様々な職種との連携を図りながら、より良い支援を行うことが出来るよう研鑽を積んでいきたいと思います。
 産業医の選任義務のない小規模事業場は全体の96%を占めており※、産業保健総合支援センターでは両立支援に留まらず、産業保健サービスをあまねく提供できるように、外部労働衛生機関としての役割はこれからもますます重要になっていくと肝に銘じて日々の業務に取り組んでまいります。
※出典(総務省「令和元年経済センサス-基礎調査結果」)

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