今月の現場から(保健師コラムリレー)

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~生涯現役社会に向けての両立支援と今後の課題について~

NXキャッシュ・ロジスティクス株式会社 九州支店 保健師 前川史佳

2025年問題について数年前からニュースで目にする機会が増えました。さらなる超高齢社会の問題に企業の一員として働く中で感じたのは、「労働力」の問題でした。
 私の所属している弊社の九州支店においても、従業員の平均年齢は高くなってきておりそれに伴い様々な疾病のリスクがある人、または罹患する人が出てきているように感じています。

 両立支援の利点として、会社側は「労働力を失わないこと」、そして従業員側は「病気を理由に働く意欲を否定されないこと」があると考えています。産業保健師としてこのバランスをとる役割を担っていますが、大変心強いことに弊社においては管理職サイドに安全配慮への理解があるため、両立支援を必要とする従業員への対応を会社側と協力して行うことが出来ています。
 しかし、私たちが支援を行う中には会社側の配慮を受けても本人が仕事を優先し治療や通院が遠のくケースがあります。厚生労働省の「事業所における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」に、労働者本人による適切な取り組みが重要であると記載があるとおり、両立の主体は従業員本人です。労働者本人が正しく病識を持っているか、治療についてどのように理解しているかは重要な情報です。私たち医療職から見ると命に関わるようなデータや疾病でも、本人からすると「もう症状はないから大丈夫」と自己判断し治療や生活上の注意を怠るケースもあります。入院中であれば治療は医療職によって管理することが出来ますが、日常生活となれば本人の自律性に委ねられるためです。

 高年齢者雇用安定法が改正され、2025年には65歳までの継続雇用が会社へ義務付けられています。また、国はさらに70歳まで働き続けることが出来る環境を求めています。私たちに直接関係するところでは2024年に特定保健指導の制度が改正され、評価基準にアウトカム評価が導入となります。食事・運動習慣の改善など行動変容が重視されることになり、この変更においての個人的な感想は従業員本人が「生涯現役社会」に向けた取り組みが求められているということでした。

 産業保健師は他の産業保健専門職と比べて、従業員にとって最も身近にいる医療職です。従業員本人へ病識を促し、治療継続を必要だと判断する基準を持つことが出来るように支援すること、そしてその結果の行動変容を間近で見ることが出来ることは、産業保健職としてのやりがいだと考えています。アプローチの難しさに悩むことも多いですが、本人を支える一員であり続け、何かあったとき「とりあえず保健師に聞いてみよう」となる環境づくりを目指したいと思います。
 私自身まだ学びと経験を重ねている状況ではありますが、会社と従業員をつなげる役割だけでなく、本人のこれから先の健康も支えるための支援を続けたいと思います。

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