今月の現場から(保健師コラムリレー)

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~「働き続けたい」という社員の思いに主治医と職場の橋渡し役としてできること~

NX商事株式会社仙台支店総務部 保健師 後藤豊美

職場の産業保健看護職として、両立支援の対応がスタートするきっかけは、ご本人からの相談もしくは管理監督者からの相談がほとんどです。ご本人からの相談内容としては、「がん」と診断され手術や抗がん剤での治療が始まるという状況の中、精神的にショックを受け、とても悲観的になっている状態がみられます。そのため、まずはご本人のお話をゆっくり聴くようにしています。お話の内容から、何に対して不安があるのかを一緒に整理していきます。「仕事を続けていくことができるのだろうか」という不安に対しては、休職制度の説明を行い、十分治療に専念できるだけの休暇が取得可能であることを説明します。具体的には、年次休暇の残日数や給与補償のある傷病欠勤の日数(勤続年数によって異なる)に加え、1年の休職期間があることをお伝えします。職場復帰後の通院には、時間休暇や年次休暇の取得ができるよう年次休暇を残した形で傷病欠勤を使うこともできるため、ご本人へ確認を行うようにしています。また同時に、金銭的な不安に対しては、限度額適用認定証の発行ができることや休職期間中に傷病手当金の受給ができることを案内し、総務担当者へ手続きを依頼しています。

 次に、仕事に復帰することが検討できる段階になると、主治医に勤務情報を提供し連携することで、治療を行いながらも業務が可能であるように職場環境を整えサポートすることを伝えています。主治医に提供する情報のポイントとしては、就労状況、業務内容などご本人が職場で業務をしている姿を想像できるような内容を盛り込むことが重要です。普段産業保健看護職が職場を定期的に巡回し、社員と関わって働く環境を把握しているからこそ伝えられる情報があると考えています。職場では、主治医からの情報をもとに、産業医とともに総務担当者および管理監督者へ就業上の措置や配慮が可能であるのかすり合わせを行っています。職場の状況によっては、配慮が難しい場合もありますが、社員一人ひとりの状況に合わせて、安全配慮の観点からも可能な限り最善を尽くしています。

 最後になりますが、私が担当するエリアは東北6県に事業所があり、事業所人数が少人数である所も多くあります。分散事業所で日頃会えない社員が相談したいと思った時や周囲が変化に気づき産業保健看護職に繋ぎたいと思った時にすぐに繋いでもらえるよう、事業所を訪問した際は、一人ひとりに声をかけて回っており、信頼関係の構築は欠かせません。実際に働いている職場状況を定期的に「みて」、社員からお話を「きいて」情報収集をして、必要な時に関わる関係者を「つないで」、「動かし」、一人ひとりに合う働き方・最適解を「つくる」という活動を通して、社員が安心して働き続けることができるようにこれからも関わっていきたいです。

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