今月の現場から(保健師コラムリレー)

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アイシン軽金属株式会社 安全健康環境部 保健師 今度 悠樹

当社に入社し15年が経過しました。その間に従業員数は1000人近く増加し、疾病による休業や健康相談の件数も増加しています。中でも長期療養が必要となる、がん・生活習慣病での治療と就労の両立支援が課題となっています。
 当社は製造業であり、交替勤務や特定化学物質・有機溶剤等の取り扱い、特定粉塵作業など特殊健康診断対象となる作業工程がいくつもあります。仕事を行う上で安全に働ける環境整備も重要となるため、現場の作業を理解し従業員がどのような作業場で作業を行い、どのような作業工程に携わるのかを把握していることは、産業保健看護職としての業務を果たすうえで欠かせない情報であり、この情報把握は役割の一つと考えています。
 入社当時は、一人職場でした。上司の巡視に毎日帯同させてもらい、製造現場で設備仕様から作業内容まで細かく説明を受けました。また会社として医療職を常勤で雇用することが初めてということもあり、現場の管理監督者の方に自分の存在(保健師)を知ってもらうことから始まる!と感じ、何度も現場に足を運びました。その結果、ものづくりの現場を学び、主治医からの意見書内容を該当職場の作業内容へと置き換え、産業医や職場上司へ具体的に伝えられるようになりました。対象者の方だけではなく職場にも寄り添うことで、職場の理解や就労に伴う両者の不安を解消しながら就労継続へ前向きに進んでいくことを実感しています。
 また、この数年間にわたる感染症対応により、良い成果もありました。それは働き方改革が進み、在宅勤務・テレワークの推進、育児・介護休暇や時短勤務の適応期間延長、コアタイム無しのフレックス、更に60歳以降の再雇用後の働き方に短時間勤務又は通常勤務(8時間)の選択性導入など、個々人の体力や体調に合わせた働き方制度を活用できるようになりました。治療を続けながら就労している方への適応もしやすくなりましたが、対象者自身が制度を知らない場合もあり、必ず産業保健看護職が面談し説明を行っています。制度を知らないがゆえに無理な勤務を続けていた事例もありました。治療に伴う不安、働くことへの不安…多くの不安や苦しみを抱えながら就労していることも少なくありません。私も病気により2カ月入院ののち、在宅勤務を1カ月活用して職場復帰しました。上司や産業医に自分の状況を細かく伝え、出社時の不具合な点や就労に際し不安な点を少しずつ改善していくことで、体は本調子ではありませんでしたが、仕事に復帰できた喜びは大きいものでした。
 職場と従業員とのコーディネーター役として関わっていく中で、産業保健の専門職でもあり看護の専門職でもあることを強く認識し、職場や従業員との信頼関係・協力関係を築き上げるスキルやコミュニケーション能力を常に磨いていくこと、職場の状況を把握しながら対応していくための職場巡視による製造現場の現状や変化点など多岐にわたる情報把握力の重要性を感じています。保健指導から得られる従業員目線での職場の状況も大切な情報です。
 『安全と健康は全てに優先する』を掲げ、この会社で働くことができて良かったと思える職場づくり・元気にいきいきと働ける人づくりを今後も実践していきます。

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