今月の現場から(保健師コラムリレー)

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治療と仕事の両立支援 ~寄り添うサポートを目指して~

北陸電力(株)福井支店総務部 健康推進室 保健師 白崎慶子

私は約30年、企業の産業保健スタッフとして働いています。生活習慣の変化、企業を取り巻く環境変化、労働環境の変化など様々な要因から有所見者が増加するなか、近年は新規感染症も加わり、従業員の健康課題、健康支援の在り方も多様化しています。
 当社の健康支援のひとつに「治療と仕事の両立支援」があります。年々、健康診断後の精密検査や、自覚症状からの病院受診でがん等重大な疾病がみつかるケースが増えてきました。がん等を告知されたとき、本人は大きな衝撃を受けるとともに、「この先仕事はどうなるのだろう?」と考えます。私たちはこのような状況において、まず本人に対し精神的ケアを行います。その後会社と、疾病、治療内容について情報を共有し、会社は、職場での仕事の配慮について検討を行います。一般事務職であれば、業務内容の見直し、技術職であって現場作業が多い場合は、体への負担が少ない事務作業への変更、管理職ならば、管理業務を減らし負担を軽減するなど、必要に応じて、従業員の健康を保護するための措置を講じます。また、病状によっては、職場・人事担当・労務担当とも協議のうえ、自宅からの通勤・通院治療が可能となるよう働きかけ、「治療と仕事の両立」を支援します。更に当社では、フレックス制度、時間単位休暇制度、在宅勤務などの勤務制度が整備されており、安心して治療に専念できるような体制が整っています。繰り返しになりますが、ここで私たち保健師の大事な関わりはメンタル面でのサポートとなります。
 具体的には、病気や治療に対する不安、仕事への不安、休暇や金銭での不安、不眠、食欲不振、脱毛など、身近な人にさえ話せないことを「話せる相手」になることです。そのために、従業員との信頼関係を深め、身近な存在になることが大事だと考え、健康支援の取り組みとして、毎年、全従業員を対象に、健康診断の結果に基づく一人30分の面談、食事・運動の健康教育を行っています。また、積極的な職場巡視により、コミュニケーションの機会を増やすとともに不調者の早期発見・対応を行っています。こうした長年の活動から、業務内容、職場環境、生活状況、人柄等多くの情報を得ることで、本人と適切な距離を保ちながら「寄り添うサポート」につながっていると考えています。
 ひとつのエピソードをご紹介します。先日、手術後で通院治療中の従業員から「仕事のことは上司に!寂しくなったら白崎さん!」という嬉しい言葉をいただき、寄り添うサポートができたと実感しました。今後も、がんだけでなく、脳機能障害、透析、不妊治療など、様々なケースの両立支援にむけて、日頃から従業員一人ひとりと丁寧に関わり、誰もが困ったときに相談できる体制作りや、迅速に的確な助言を行うための情報収集に努めるとともに、何よりメンタル面で力になれる存在でありたいと思います。
 私は昨年、両立支援コーディネーター基礎研修を修了しました。従業員、職場、そして会社のために活かしていきたいと考えています。

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