今月の現場から(保健師コラムリレー)

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社内外と連携して進める「治療と仕事の両立支援」 ~職員の「働く」をイメージして~

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA) 保健師 富永知美

私が産業保健を目指すきっかけとなったひとつに、「長い労働生活の中で、より健康で能力を発揮できるようにサポートをする重要性」を感じたことがありました。当時は、労働生活を「定年までの約40年」と捉えていましたが、今は「人生100年時代」と言われ、定年延長、再雇用や再就職、生涯現役など更に長いスパンで「働く」を考える時代となり、健康づくりや両立支援の重要性をより感じています。また、働き方自体も、IT技術の革新、働き方改革やコロナ禍などにより、変化が加速し、多様化しています。
 このように働き方の幅が広がる中で「治療と仕事の両立支援」を進めるには、職員本人がどのように「働く」か、本人や社内外の関係者と同じイメージをもって一緒に取り組んでいくことが大切だと感じています。

■社内外と連携し、「働く」をイメージする
 がん、脳卒中や難病などの疾病により、従前の業務や働き方から変更せざるを得ない場合もあります。JAXAでは、復職支援プログラムがあり慣らし期間を設け、スムーズな適応をサポートしていますが、復職支援プログラムを始める前の早い段階から、職員本人やご家族、主治医・リハビリ担当者、職場上司や人事等の社内外の関係者と相談を始めることを意識しています。ご本人も復職の意思を持ち、関係者もそれぞれの視点から支援したいと考え、「復帰」に向けて動いていても、目指す「働く」イメージが一致していないこともあります。そこで、事業場内の保健師として、ご本人や関係者から思いや考え、状況や見通しなどを伺い、「働く」イメージをすり合わせていくことを大切にしています。特にJAXAは研究開発という専門的で特殊な業務上、業務内容や職場環境の個別性が高いため、保健師としても当該職場の理解を進め、それを社外の関係者に伝え、より具体的に「働く」をイメージしてもらい、復帰環境についてのご意見をいただいたり、ときに復帰に向けたリハビリに反映いただいたりしています。ご家族も交えての面談、職場上司と病院訪問、リハビリスタッフの職場訪問など、ご本人を中心に関係者との相談を積極的に行い、ご本人の「働く」イメージを皆で作り、復帰準備をしています。

■新しい働き方と両立支援
 JAXAでは、もともと時差出勤や時間休などの制度もあり、また、協力的な職場も多く、定期通院などの治療や復職など調整のしやすい環境にありました。現在は、さらに、テレワークやフレックスなどの条件が緩和され、より自律的な新しい働き方が始まり、仕事や生活のバランスがとりやすくなっています。治療と仕事の両立支援においても活用が期待されますが、その一方で、頑張りすぎてしまう・無理をしてしまう場合も出てくることを懸念しています。ご本人との定期面談や職場と連携して状況をフォローし、本人がどのように「働いているか」をイメージし、自律的に進める面と、職場として配慮や管理していく面などを相談し、体調を維持しながらパフォーマンスを発揮していただく環境を一緒に整えていくことが大切だと思います。

 今後も働き方は変化していくものと思われますが、どのようなときもご本人がどのように「働く」かをイメージして、ご本人や職場に寄り添った支援をしていければと考えています。

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