今月の現場から(保健師コラムリレー)

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~『働きたいを支えるための仕組みづくり』~

サンデン・ビジネスアソシエイト(株) 総務人事部 安全衛生グループ 保健師 帆苅なおみ

私は産業看護職として病気や体調不良などで仕事の配慮が必要な労働者に対して、管理監督者(事業者)が適切な配慮を実施できるように、労働者の健康状態や労働環境の理解に努め、気持ちに寄り添いながら、産業医・上司・人事などの関係者と連携して支援をしています。支援をする上で産業医と共に念頭に置いているのは、「会社の制度として持っているシステムの範囲内で精一杯、対象者のサポートに努力する」ということです。支援が必要な場合でも、会社にそのための制度や仕組みがなければ叶いません。また、労働者が望んでいる働き方を会社が提供できるとは限らないため、会社ができる配慮にも限界があることを、労働者に理解してもらうことも大切です。労働者・会社間で十分に協議し、双方が納得できる配慮内容を決めるために、産業看護職には安全配慮の視点を持ち、労働者を中心にした関係者の連携をコーディネートする重要な役割があると考えています。
 また、個別の対応事例で把握した課題を人事部と共有し、制度や仕組みに反映させることも産業看護職の大切な役割だと考えています。人事制度への反映について、弊社での事例をご紹介します。産業看護職は、事例から把握した制度上の課題について、正式な会議の場だけでなく、日常的に人事責任者と共有していました。そうした中、2018年に人事部が育児や介護等の個人のライフサイクルに応じた多様な働き方ができるよう、育児勤務の拡充を検討することとなりました。その際に人事責任者から、「以前から聞いていた労働者の健康面の課題にも対応できる制度にしたいので、制度改定に参画してほしい」との依頼があり、産業看護職が短時間勤務制度の改定に参画する機会を得ました。弊社では短時間勤務制度が導入されていましたが、4時間、6時間の固定勤務であり、対象者は病気で長期休業した復帰後に限定されていたため、長期休業をせずに治療をしている場合や、高齢労働者の体力低下等の病気の診断がつかないケースで活用できない課題がありました。事例を想定しながら人事部と協議を重ねた結果、短時間勤務の対象者が、長期休業の復帰後だけでなく、「心身の健康不全や定期的な通院、治療のため、短時間勤務の申出をした社員」に拡充されました。さらに、勤務時間も6時間のフレックス勤務、午前勤務、午後勤務、2時間を限度に始業時間を繰り上げ・繰り下げが可能となり、労働者の状況に応じた短時間勤務を選択できるようになりました。この制度改定により、個人の健康状態に応じた柔軟な働き方や就業配慮が可能になってきていると感じています。さらに、制度ができたら、活用されるよう認知を促すことも重要です。管理職教育や社内情報誌、ポータルサイト等で制度が認知されるようにしています。
 最後に、働くことは、人生を充実させる重要な要素だと思います。一人ひとりの“働きたい”に寄り添い、支援できる保健師でありたいと思います。

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