今月の現場から(保健師コラムリレー)

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デパート健康保険組合 冨山紀代美

私自身は総合健康保険組合の保健師のため、事業所に「治療と仕事の両立支援」を直接的に働きかけることは多くはありませんが、ここ数年は健康経営の視点から両立支援に関わるケースが増えてきました。
 健康経営を目指す企業において、心身が健康であることのみならず、幸福感があることが従業員の労働生産性を高めるというエビデンスがあることから、病気があってもイキイキと安心・安全に働ける職場環境を作ることが大切な課題となっています。
 現在、当健康保険組合に加入する健康経営を目指す事業所にとって、両立支援を社内に制度化することが必須のため、労使ともに協議できる安全衛生委員会のみならず、経営会議等でも課題に上がっています。産業保健スタッフのいない事業所には、私たち健康保険組合の保健師がその会議に参加させていただくこともあります。
 課題解決のためには、まずは社内での制度構築が一番ですが、制度があっても、現場での運用は、デスクワークから製造、店舗等と、業務やその環境が多岐にわたるため、その場に沿った柔軟性が大切です。また、その運用の根底には、労使間・従業員間でしっかりとコミュニケーションが取れ、信頼関係が築かれていることがベースになります。信頼関係が築けていればこそ、その上で各現場それぞれでの配慮ができるのではないかと思っています。
 また、両立支援は、労働者本人からの申し出によることが端緒となるため、そもそも本人からの申し出がスムーズに行えるよう、上記のような社内の環境整備がより必要となるのだと感じています。加えて、両立支援を受けるご本人が、自らの状態(病気・症状・治療方法等)をきちんと把握し、言語化(または文章化)できることが望ましいため、事業所側、従業員側共に、ヘルスリテラシーの向上が、キーポイントになるのだと思います。
 最後に、両立支援だけに言えることではありませんが、従業員が「安心・安全」な企業にいること、具体的には、業務中に自分の思った意見がきちんと伝えられる環境があること、急に仕事を辞めさせられるようなことがない安心な職場であること、一緒に働いている人が、心身共に自分や周囲の人を傷つけることのない安全な職場であること・・・・そういった「安心・安全」な環境で、人はお互いを気遣い、自らの力を最大限に発揮できるのだと思います。
 「治療と仕事の両立支援」を事業所が真摯に検討し、企業風土にきちんと根付かせることができるよう、またヘルスリテラシーの向上を目指して、健康保険組合の保健師としてもコラボして働きかけていけるようにしたいと感じています。

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