今月の現場から(保健師コラムリレー)

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~「治療と仕事の両立支援」を社内で進めていくために~

オムロン エキスパートリンク株式会社 野崎律子

現在、私はオムロングループの健康経営を担当し、企画立案から実務展開・効果検証・改善運営など一連の運用プロセスに携わっているため、健康経営の視点から治療と仕事の両立支援の進め方について触れたいと思います。

■健康経営の取り組み
 オムロンでは、企業理念の実践を通じて社会的課題の解決を目指しています。変化の激しい世の中において、新たに生まれる社会的課題を解決していくには、さらなるイノベーションの創出が不可欠です。そのためには、オムロンで働く多様な人財が、活力に満ち溢れ、ポテンシャルを発揮することが重要と捉えて、会社の発展にとっても欠かせない社員の健康の維持向上に向けて、2017年度に「健康経営宣言」を制定しました。以来、経営トップ自らがリーダーとなって健康経営を推進しています。

■両立支援の取り組み
 治療と仕事の両立支援については、健康経営を推進する保健師の視点から、オムロンで働く従業員一人ひとりが、どのような状況でも個性や能力を存分に発揮できる環境づくりを目指して取り組んでいます。治療を受けながら仕事を続けたい社員が仕事を続けられるよう、体調や治療の状況に応じて柔軟な勤務形態が選択できる制度や、治療・通院目的の休暇・休業制度等の必要な支援や制度を導入しています。これらの支援や制度を組み合わせて活用しながら、個別の状況に応じた配慮や就業上の措置につなげています。治療と仕事の両立支援は、産業医や保健師等の専門職の関与が必要になる点で、介護や育児等の他の両立支援と異なります。そのため、疾病を抱える社員一人ひとりに適時適切に対応するには、一定のリソースが必要になります。産業看護職の配置については、社員1,000人に1名程度とする企業があるなか、当グループでは約300人に1名の産業看護職を配置する基準を設けており、産業看護職がコーディネーターとなって、きめ細かい支援を行っています。

■健康経営の観点から推進
 近年、日本の経済社会を背景に、企業の持続的な成長のためには、「健康経営」が重要なものとなっています。健康経営とは、「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」です。経済産業省では、優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度を設け、「健康経営優良法人」の認定を行っています。なかでも特に優良な大規模法人の上位500社が選ばれる「ホワイト500」(オムロン(株)もこの500社に選ばれています)や、「健康経営銘柄」に選定されるには、複数の基準を満たす必要があります。また2021年の認定に向けて、優良な中小規模法人の上位500社に対して、新たに「ブライト500」の冠を付加した表彰が行われます。「病気の治療と仕事の両立支援」はそれらの認定要件のひとつであり、「制度や施策として実行している」ことが評価されます。つまり、両立支援は、健康経営の施策のひとつとして企業に求められている取り組みといえます。
 経済産業省のアンケート調査によると、健康経営優良法人の認定を受けた企業は、健康経営に取り組むことで多くの効果を実感しているとの結果になっています。事業者による両立支援を図る取り組みは、健康経営の実現といった意義もあります。また治療と仕事の両立支援を職場で推進する場合、健康経営の側面からの意義やメリットも併せて経営サイドへ示すことで、取り組みがスムーズに行えることにつながります。オムロングループは、「治療と仕事の両立支援」を「健康経営」にも組込み、全社で推進しています。健康経営優良法人の認定取得には、毎年多くの企業が競って申請しており(昨年度は大規模法人2,328社、中小規模法人6,095社が申請)、認定を受けること自体狭き門ですが、オムロン(株)は「ホワイト500」の認定を4年連続で受け、さらに「健康経営銘柄」に2年連続で選ばれました。今後も、厳しい経営環境のなかにありますが、疾病を抱える社員の活用に関する取り組みを、健康経営の観点から推進していきたいと思っています。

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