今月の現場から(保健師コラムリレー)

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~「制度」と「ヒト」の両輪による支援を目指して~

三井化学株式会社 楠本真理

新型コロナウイルス感染症対策で、各企業の皆さまは様々な対応を求められていることと存じます。しかし、そんな中でも、コロナ対策だけでなく病気を抱えながら仕事を続けている人への支援も待ったなしですので、通常の業務と緊急事態への対応とに、追われている方も多いのではないでしょうか。皆さま、お疲れ様でございます。

 私の勤めている三井化学株式会社での治療と仕事の両立支援に関する取組みを簡単に紹介します。
 まず、制度としては、休養が必要な場合には、年20日付与される有給休暇(翌年まで持ち越し可)に加え、使い切れず失効した年休を60日分積み立てておける特別休暇、1年間の病気欠勤、2年半の病気休職(入社後2年以内は半年)により、トータルでは同一疾患で約3年半の休みが取れる制度になっています。しかし、近年では休んで療養する期間は短縮傾向にあり、治療をしながら、休まずに働き続けることができる仕組みをより充実させることが必要となっています。弊社でも、前述の特別休暇は、元々は3日以上連続で療養が必要な時しか使えないものであったのを、治療に必要な場合は半日単位から取得できるようにしたり、通院のための移動時間の削減のためにテレワークを活用したり等、柔軟に変化させてきました。
 一方で、このような仕組みの充実を図っても、実際に必要になるまでは関心を持たない者も多く、いざというときにどのような対応ができるのかを知らない、というようなケースも少なくはありませんでした。制度が変わったことを知らない人もいました。もちろん、必要になってから情報収集し、後から知ったとしても活用はできるのですが、例えば、制度を知らないと必要な書類が足りずにもう一度病院に行かなくてはならなくなったり、休んで治療する以外の方法はないと思って主治医とその方向で治療計画を進めたり、ということも起こります。ただでさえ病気で不安な時に、アタフタと情報収集するのも骨が折れます。なんとか、もっと皆にこれらのことを身近に知ってもらいたい…。そんな思いから、人事や健保とも協力し、他社の事例も大いに参考にしながら、昨年、仕事と治療の両立支援のためのわかりやすいガイドブックを作成いたしました。
 ガイドブックでは、必要な情報がまとまっているというだけでなく、時系列でどのような行動が必要になるのかを明確にすることや、事例を多く載せてイメージしやすいような工夫、またわかりやすいだけでなく、病気を持っている人に寄り添うメッセージを加えること等を考慮して作成しました。また、作って終わりではなく、病気になる前から手に取ってもらうために、職場内で読み合わせをすることや、印刷して職場に置いておくこと等も勧めており、より活用するための取り組みもおこなっているところです。
 最後になりますが、弊社では、病気になったからといって会社を辞めてしまう、というようなケースは、幸いなことにほぼ発生しません。これは、制度があるというだけでなく、普段から産業医や保健師と対象者のコミュニケーションにより信頼関係が築かれているため、まずは健康管理室に相談してみよう、という風土が根付いていることもその要因の一つだと考えます。制度だけでも、人の温かさだけでも、両立支援は成り立ちません。これからも、この両輪で、また、健康管理部門だけでなく人事部門や健保、労働組合等、会社の中で協力しながら、両立支援に取り組んでいきたいと思います。

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