今月の現場から(保健師コラムリレー)

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~治療をしながら働く人々を支え続けるために~

(株)NTTデータ 人事本部 人事統括部 健康推進室
課長代理 保健師 大島 桐花

今から30年前、「がんは不治の病」と思われてきました。現在がんと診断されても10人中6人は10年以上暮らすことができると報告されています。そして、胃がんや大腸がん、乳がんなら早期に見つかれば、ほぼ治るのが現実です。診断技術や治療方法の進歩により、入院期間は短くなり、長期の外来診療が必要な疾患へと変わりました。そして職場では、働きながら治療・療養が必要になるとその時々の状況に応じた就業条件、仕事の環境整備など、就業上の配慮が欠かせません。個人的には治療を受けることによって起こる生活上の変化(想定外のことが多い)に対する不安や現実的な対処への負担感が強いられる状況となります。

企業に所属して従業員の健康管理に従事する保健師としては、日常の健康支援活動を通して培ってきた社員、職場上司、組織との信頼関係をもとに適切な就業上の配慮がされるよう、社員本人と上司、人事総務との調整役を担っています。

治療方針によっては数回の入院が必要となり、やむなく復職と休職を繰り返すこともあります。入院は長期間ばかりではなく検査入院のように2~3日の短期間もあり、本人が一時的に不在であっても業務が円滑にまわっていくような配慮が必要です。また、外来治療では、毎日通院しながら放射線治療を受けるものや、間隔をあけて数回薬物療法を繰り返し、長期間にわたる治療もあります。1回の薬物療法にかかる時間によっては半日ほど勤務を休めると業務への支障が少なくなる場合もあります。いずれにしても治療計画は可能な範囲で早めに上司に説明し、両立できるように業務の調整をお願いしていくこと、そして職場の同僚からの理解や協力を受けられるように環境を整えていきます。

治療期間中は、全く副作用を感じずに済む人もいますが、概して治療を通して不安や緊張、副作用等に関係した負担が伴うものです。通常勤務を継続するには、それなりの体力気力を必要としますので、短時間勤務制度のように時間や業務量・仕事内容等を状況に合わせながら、焦らずじっくりと心身の状態を整えていくことが治療と仕事の両立を上手に進めていくコツと言えるでしょう。

保健師の支援方法では、社員本人と直接面接をして援助することもあります。面接の中で社員本人が今後の治療と職場生活、家族との生活、個人生活と生活全体に視野を広げつつ自分を振り返って、この先をどのように過ごしていきたいか、何を大事にしたいと考えているのか、本人が気持ちを丁寧に語れるように聴いていきます。もちろん言葉に表現できない気持ちもありますが、本人の意思を尊重しつつ将来を意識化することは治療へのモチベーションや職場での生活環境への配慮を支援する上で助けになっていきます。実際に自分の気持ちを率直に語ることはなかなか難しいことだと思いますが、当社では新入社員として入社したときから職場ごとの担当保健師が健康管理の相談窓口となり、健康診断結果フォロー、健康相談、健康教育、長時間労働面接、ストレスチェックからの職場支援等、様々な関わりを通し、身近な専門家として日々コツコツと地道な支援活動を実施しています。

困ったときは自分の担当保健師に相談できる、上司も保健師へ相談することを勧めるという環境づくりに力を入れています。

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